フリーランスの作り方。フリーランスになるには?

「あの、ちょっと待ってもらえます?制作責任者呼んできますので・・・。」

彼女は、いそいそと書類をまとめロビーの奥に消えていった。ほどなくして、細めの男性を連れて戻ってきた。たたずまいはカジュアルだが、眼光がす るどい。

どうやら、その番組のプロデューサーらしい。かれは、軽く挨拶するとディレクターから渡されたキューシートに目を落とし読み始めた。

しばらく、間が空き、彼が口を開いた。

「ふっ、面白いじゃない。やってみれば?」

「あ、ありがとうございます。」

それが制作会社のトップの竹崎さんとの出会いとなった。

結局その日、番組の一つのコーナを一つ潰して、持ち込んだ進行表に沿った内容を収録することになった。

この時代、まだテレビというものが持つ倫理観とかそういった規制などもゆるく、ある意味余裕のあった時代である。また、作っている側もちょっと異端な人物が多かったのかも知れない。だからこそこういったケースも受け入れてくれたのだろう。

スタジオに入り、MCの方に挨拶して、簡単な打ち合わせをして収録が始った。

「今日は、自主制作で音楽を作っている浅川さんをお招きしました。」

グレーのスーツを身にまとい、メガネをかけた7・3別けのサラリーマン風のいでたちの私がフォークギターを抱えて登場した。

「浅川さんは、Brain Weather Projectというバンドをやっているそうですが、メンバーは何名構成ですか?」

「はい。メンバーはドラムと、ギターとベースと、シンセとパーカッション、合わせて1名です。」

「1名?」

「はい。バンドは1名です。私だけです。私の音楽性を理解できるメンバーが居なかったので現在は私一人です。」

当時多重録音で一人で演奏からボーカルまで全部やっているのは少なかった。

「一人でどうやってバンドやるんですか?」

「あー、やろうと思えば出来ます・・・。」

というような会話が続き、16mm(オープンテープ)で、持ち込んだカラオケをバックに演奏が始った。ギターは持っているだけで、弾いてもいない。

「それでは、失恋のどん底で生まれた『Under the Complex』という曲を歌っていただきましょう」

最初は、フォークソングみたいな歌い出しだが、徐々に壊れていく。最後には、暴れ始め、司会者が止めに入ってつまみ出されるという構成。

「放送中、お見苦しい場面を御送りしました。さて、次のコーナーは・・・・」

MCの方にはなるべく、冷静に対処するように台本を書いておいた。おかしいものをおかしく演出してもおかしくはない。それより、正常と異常の間にある境界線というのが面白い。日常に潜む狂気は、狂気の中の狂気より笑えるし、ちょっと怖い。

要はインパクトであって、音楽を聞かせる気はない。深夜のローカル番組であるから、短い時間で印象を残せば、聞きたい人は探してくれるだろう。というより、こうしたものはイベントであって、イベントそのものを楽しむ事がより重要なのだ。

こんなバカな事を公共の電波でやれる面白さの方が重要であって、それで宣伝が成功するか?なんて考えてもいない。


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