仕事をやめ、フリーランスとしての仕事が始まった。ここで、いきなり起業する場合との違いは、すでにその素地が出来上がっていたことだ。それまで培った技術やスキルがあった。要は、メインの仕事しながら副業という形で、実績を積んでいたから出来たのだ。
しばらくして、同じくスリーアイを退社した現、株式会社サンナナの佐藤圭君と友人の現アニメーターでCGアーティストの大野君とシェアリング企業デルタワークスを始める。しかし、未だに法人にはしていない。
デルタワークスは、あくまでも箱でしかない。
仕事のやり方は、私が起点となり全てプロジェクト単位で構築される。従って、固定されたメンバーは居ない。
このIT業界で、フリーで仕事をしたいなら、ある程度の柔軟性が必要だ。それぞれが自立分散して機能する。そのやり方は、星合先生の提唱されているSCBに似ている。
中心人物の求心力が無くまたは利益を確保できなければ、空中分解をおこす。
「会社」というシステムは良く出来ている。役割分担を決め、その中でそれぞれの得意分野を活かし、組織として運営する。そのために効率的な仕事ができ、それぞれの特性も生きてくる。逆に言えば、仕事すべてに精通する必要はない。
それに対して、フリーランスは、基本的に全て自己責任。全てのことに対して力を向けなければならない。だから、万人に向いたやり方ではないのだ。それでも、その在り方は各々のやり方において可能だろう。
山に登る道は一つではない。
登る山が低かったとしても、心に余裕があれば、回り道をして人が知らない湖や谷を見つけることができるかも知れない。
要は、登ることが目的ではない。そのプロセス、つまり道だ。もし、そのことに気づかなければ、生産性とか利益率とかそういった数字だけに意識が行ってしまい、大事な「生きること」の意味を見失ってしまう。
私の場合、それを始めたのは、失恋から立ち直るきっかけをくれた今は亡き親友、矢野くんの言葉だ。
「こんな時は歌を作るといいんだぜ」
そこから全ては始まった。
失恋した恋人の浮気相手が彼だった事を、後日知ったとしてもだ。(これには笑ってしまったが)
「矢野、ありがとう。」