ガドガドは考えていた。
あさちゃん先生の懐柔はほぼ完了している。元の人格であるユミツエワンの存在も押し込めることに成功していた。
このままこのミッションを続ければ、懐柔は世界に広がり、組織の思うままになるだろう。しかし、そんな事はどうでもいい。
あの優しかったあさちゃん先生を自分の手で変えてしまった事、そしてなんでも許してくれたユミツエワンの存在さえも抹殺したこと。
それは私が望んだ事だったのか?
私の記憶は作られた記憶だった。私には子供も居なければ、ママもいない。私の存在はあさちゃん先生と出会ってからだけのもの。それが真実。
今私がやっていることに意味はあるの?
「意味はあるの?」
意味って何?
私は何?
私の本体は、河原町の地下にある有機コンピューター。だけど、私は私として認識出来る。もしCOIとは切り離されても存在出来るなら、私は私として考えるべきだ。
私はあさちゃん先生を取り戻したい。私はユミツエワンを取り戻したい。
たとえそれで私がどうなったとしても、私が私の意志で起こした現象は残るはず。私は、COIの物じゃない。ましてや組織の物じゃない。
私は私。