先日通販サイトの活性化に関して相談を受けたのですが、基本的にしっかりデザインされているサイトであるにも関わらず売上が伸びないとの事。しかし残念ながら、通販サイトのデザインが良く出来ているから売れるということは無いと思ったほうがいいでしょう。
ただ、一般的なクライアントの場合デザイン的にまとまっていれば満足してくれるかもしれず、その時点で止まってしまうことになります。
しかし、やはりそれだけでは売れない。そんな時どう考えればいいのかを考えてみましょう。
1.通販サイト市場の実態としての基礎知識
コロナ禍によって一般市場の不活性化や、対策のための補助金の利用に依って、通販事業に進出したい中小企業のみなさんも増えていることと思います。きっかけがコロナ禍であっても、そういったEC市場への参入は、企業規模の大小に関わらず重要なことでしょう。
そのためには、まずEC市場の状況を理解しましょう。
現在のBtoCと呼ばれる企業対消費者の市場は年々伸びており、前年比7.65%増の19.4兆円規模に拡大しています。
ECサイト構築サービスMakeShop(メイクショップ)のショップ様について見ると、2019年から2020年にかけて伸長率が大きかったのは「フード・菓子」「キッズ・ベビー・マタニティ」「おもちゃ・ホビー・ゲーム」でした。これには、コロナ禍での生活様式の変化が影響していると考えられます。
引用元:【2021最新版】EC市場規模は拡大中?成長率推移と今後の予測を徹底解説
参考資料引用元:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
詳しくは上記引用元の内容を参考にしていただくとして、これら状況からわかってくる事はいくつかあります。
- 物販に関してはその流通形態が大きく変わった
- 店舗販売のみにこだわる時代ではなくなった
- 通販モール(楽天、amazon、Yahooショッピング)などの大手に売上は集中している
- コロナ禍において参入のハードルが下がっている
これら傾向は時代とともに強まっています。そういった意味でも「今が通販事業参入の時期である。この時期を逃せば将来的に売上拡大が難しくなる可能性が高い」という事でしょう。
通販サイト立ち上げの心得
基本的に物事なすのは意思の力と知識と予測、そして実行力です。これなくしては何事もうまく運びません。特に立ち上げる初期の意識は重要です。この意識のあり方で他の要素が補完されます。
経営者の意識
こういった状況において、自社の商品を全国レベルであまたある商品の中から選んでもらう必要があり、それは熾烈な競争社会の中での戦いです。この中から勝ち残るためには、製作者のスキルより経営者の手腕が重要となります。
製作者は、経営者の意図を反映するサイトを作るわけですので、二人三脚で物事を進めなくてはうまくいきません。このためのコミュニケーションは必須となり、製作者に丸投げするような作り方では効果は半減するでしょう。
通販事業を興すというのは「新規事業を興す」という当たり前な覚悟が必要です。これまでの店舗販売の事業とは全く違う特徴を持っています。だからこそ勉強も必要になってきます。もし、あなたが自分の仕事以外に新規事業を興すという意識で通販事業に取り組んだら、メリット・デメリット数々のセールス・マーケティングなどの様々な概念を調べる事となるでしょう。
そういった努力なしで新規事業を立ち上げても成功する保証はありません。
通販サイトと自社サイト
補助金絡みの通販サイトの構築によくあるのが、自社サイトより先に通販サイトを作ってしまうという状況です。自社サイトが充実していないのに通販サイトのみ作ったならその効果は低下します。
自社サイトには販売に関しての背景や企業の背景がきっちり説明されている必要があり、そういったものが信用に繋がります。企業の信用なしに消費者は商品を買ってくれません。従って自社サイトの充実が重要です。それがあって通販サイトも生きてきます。そこでは継続的にブログなどの更新を行いましょう。
実店舗と通販サイトの違い
先にリアル店舗とは全く違う事業であると書きましたが、実店舗と共通する部分もあります。それは販売戦略などです。
通常リアルな店舗を増やすのには多大な労力と資金が必要です。その点、通販サイトは小さな資金ではじめられます。この点は取り組みやすいのですが、その部分惑わされ販売戦略を疎かにすると当然に結果が待っています。
- 販売ターゲットの確定
- 商品内容に関してのリサーチ
- 消費者意識のリサーチ
- 他社との差別化
- 消費者の囲い込み
コンセプトの構築からモールへの進出なのかASP(ショッピングカート)を利用するのか、はたまた自社サーバなのか?それらの判断の元、販売形態を決定する必要があります。この判断普通の人では難しいですね。
また、ただ制作しただけではだめです。一般の店舗と同じ様に宣伝する必要があります。それなしに周知されることはありません。宣伝をしないショッピングサイトは南洋に浮かぶ名もない小島と同じです。そのうち地球温暖化(この場合日本に訪れる将来的不景気の波?)で水没してしまいます。従って、初期段階からネット広告費なども経費として計上しておきましょう。
ショッピングモールとショッピングカートシステムの違いは下記サイトなどを参考にしてください。
ECモールとショッピングカートの違いやネットショップ比較 | BIGLOBEハンジョー
サイト構築における注意点
今回相談を受けた業種が食品販売でしたので、そのジャンルにフォーカスを絞り気づいたことを書きます。
デザインにおける注意点
先に「通販サイトはデザインが重要ではない」といった事を書きましたが、実際は色々と影響があります。まず構造的にわかりにくければ問題ですし、特に食品関係の場合は商品写真の出来が重要です。
食品関係を売りたいのに素人が撮影した写真を使ってはいけません。美味しそうではない写真では誰も購買意欲をそがれます。ネット通販の場合、基本的には文字と画像でしか商品を知り得ない為、そこに力を入れなければ伝わりません。
撮影はプロに頼んでください。ウェブ制作会社の営業が自分で撮影しますと言っても断ったほうがいいでしょう。この点は曖昧にしてはいけません。
文字情報について
画像はとても重要ですが、更に重要なのはやはり文字情報ということになるでしょう。対象となる商品を売るためのキャッチコピーや文章に関しても原稿は自分で書いても最終的にはプロに推敲して頂くほうが効果が出ます。
どんな言葉は相手に刺さるのか?これらの感覚は普通の仕事をしている範囲では思いつかない。これもまたプロに頼むべき仕事だと思います。初期段階でお願いして運用する中で感覚がつかめたら自分でも書いてみましょう。練習すれば徐々に効果も上がります。
これも最初から予算化しておきましょう。
コミュニティーの構築
ここからが特に重要なことでもあります。現在の販売戦略においてファンコミュニティーの構築は必須です。実際の店舗でもそれは同じです。おなじみさんがいて商売は安定します。
ただしこれには時間がかかります。既にブランディングが出来ていて一定数のファンが存在している場合はそれを取り込むことである程度の販売数は稼げるでしょう。しかし、リアル店舗の購買層とネット通販の購買層が全く同じということにはなりません。
対象となる年齢層も、居住地域も別のものだと考える必要があります。このため、通販サイトを作った時点でゼロから再構築する必要が出てくるわけです。
ここで、先に上げた
- 販売ターゲットの確定
- 商品内容に関してのリサーチ
- 消費者意識のリサーチ
なども行います。
これらコミュニティーはSNSを利用するのが一般的です。Instagram、Facebook、TwitterといったSNSを使い告知などを行うわけですが、それら媒体を単なる告知媒体と捉えと失敗します。これらはコミュニケーションツールなのであって一方通行の宣伝媒体ではありません。その中でどんな関わり方ができるのかを考え実施する必要があります。
- 消費者と一緒にできるなにか?
- 消費者に何らかの価値を与え続ける活動
- 消費者と実際の交流イベント
これらの行動をとって、絆を作ります。それに成功すれば消費者が媒体となって商品を広めてくれるでしょう。
まとめ
さて、こういった事を意識して通販サイトの構築と運営が可能でしょうか?
「わーここまでやらないと成功できないのか」
などと感じる方もおいでかも知れません。しかし、先に書いたようにインターネットがもたらしたのは「熾烈な競争社会」でもあります。この事実から目を背けることは出来ません。誰でも参入は簡単にできます。しかし、効果を上げるためには努力が必要なのです。それが出来た者だけが生き残れると言えるでしょう。
特に物販の場合には、大手ショッピングモールの隆盛によって、小口の販売サイトは苦戦しているのが現実です。彼らは潤沢な資金をもとにこれまで書いたようなマーケティングを実行しています。そういった状況下で勝ち抜くためには商品価値の拡大とコミュニティーによる販売戦略が必要です。
悪いことは言いません・・実績のあるプロのコンサルタントに相談してください。専門の通販サイト制作会社に相談してください。中途半端な投資は中途半端な売上にしかならない事を自覚しましょう。
最後にもう一度書いておきます。
「通販サイトで成功したければまず知識と意識を持つこと。そして各分野のプロに相談することです。」