あのチップからウィルスがCOIのシステム内に侵入して活動を始めるまでにはタイムラグが有る。それまでにNO-ZENを始末しなくてはいけない。TUTIKUROには私が消えることはないと説明したが、本当は無理だ。
ユミツエワン一人の脳に2つの人格を共存させるほどのキャパシティーはない。それに、完全にCOIからの情報が遮断されればバイオチップに設定されている保護回路が働いて、チップ自体が機能を止めるだろう。
そうなれば、やはり私も消えることになる。
しかし、私は決めたのだ。元の世界を取り戻すことを。
ガドガドはNO-ZENの元に向かった。
「ガドガド入ります」
そこにはいつものようにNO-ZENが座っていた。
「ガドガド、あさちゃん先生懐柔化計画の進行状況を報告せよ。」
「了解しました。その前にいくつか質問があるのですがよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「私の体はどこにあるんですか?」
「そんな事は知らなくていい。」
「いえ、本当に私の体があるのか教えて欲しいんです。」
「何を馬鹿なことをいっているんだ。お前がこうして活動できるのは元の体があるからだ。それが死ねばお前も死ぬ。」
「それはありえません。私はすでにユミツエワンの脳内に私自身を再構築しています。だから私の体が死んでも私は生き残る。」
「そんな事は任務とは関係ない。それに子どもたちもお前が任務を終えることを待っている。」
「いえ、私に子どもはいません。私の記憶が操作されていたことは知っています。」
「何を言う。記憶の操作などしておらん。」
NO-ZENはガドガドが事の次第に気がついたのを知った。このままでは自分の身が危ない。テーブルの下の非常ベルに手を伸ばし部下達をよんだ。