河原町の「組織」と呼ばれる秘密基地。その奥の部屋に座っていたのはNO-ZENだった。ガドガドが言った。
「ガドガド。定期報告に来ました。」
「了解した。例のあさちゃん懐柔化計画の進行状況を聞こう。」
「はい、現在順調に計画は遂行されています。バイオチップを埋め込んだユミツエワンの懐柔は数日で終わり完全に私の支配下にありますが、あさちゃんの場合は理性的思考が邪魔をして、時間がかかっています。」
「まあ、ユミツエワンの場合は動物と一緒だからな。美味しい餌を与えれば自分の身に何が起こっても気にもとめないだろう。占い師という立場も我々にとっては好都合だ。それによって知り合う客に懐柔の種を植え付けることができればあとはこちらで進める。」
「了解しました。」
「問題は、あさちゃん先生だな。すでにWE AER JAPANのエージェントが接触を図ったという情報がこちらにも来ている。奴らが動き出せばこれまでの計画も大きく変更しなくてはいけない。」
「わかっています。WE AER JAPANのエージェントって誰か分かりますか?」
「こちらで把握しているのは、アボガドという名前だけだ。」
ガドガドは驚いた。確かにユミツエワンの友人のアボガドのことはよく知っている。先日もユミツエワンと台湾に行って、10日近く一緒の時間を過ごしたが、何事もなく付き合いが続いている。
並の人間ならユミツエワンの傍若無人な振る舞いで、へこむことも多いが、彼女はそうではなかった。しかし確かに彼女がエージェントだとすればそれも不思議ではない。そういった精神的な拷問にも耐えられる訓練を受けているはずだ。
「アボガドでしたら知っています。」
「ガドガド! WE AER JAPANのエージェントはどこにでも居る。お前が大分の保戸島に着いた際に連絡してきたもアボガドだろう。多分、お前が我々の組織の一員である事はすでに知られていると考えるべきだ。その上で我々を泳がせているはず。彼らもまだ我々の本当の目的は知らない。今、下手に動けばこれまでの計画が水泡に帰す可能性もあるのだ。」
「分かりました。しかし・・・・」
「とにかく、今はあさちゃん先生を懐柔することに専念しろ!話はそれからだ。」
ガドガドは悩んでいた。
このまま組織の手先となって、あさちゃん懐柔作戦を続けるのか?それとも・・・。