大昔(30年以上前の話)うちの両親が写真屋をやっていた時に、商売の中心であった母が商圏範囲の重ならない業者同士でグループを組んで、共同仕入れとかやっていた。
当然当時も、そういった業界全体の組合はあったが、そこでは個別の利益を確保できないと言う理由からそういった会を作ったのだろう。
メンバーとなった10名弱の皆さんはとても仲が良く、みんなで一緒に旅行に行ったりしていた。
さらにはいろんな材料の貸し借りなどもその中で頻繁に行われ、共同仕入れによって利益を確保したりしていた。
これはSCB的な動きでもあって、コミュニティーによる相互利益の確保と言うのは既にうちの母が実行していたと言うことになる。
また、それと同時に取り組んだのが、会員制の導入だった。
この会員制導入も当時は珍しかったのだが、それらを実施したのには理由がある。それは写真屋の店の隣に寿屋(スーパー)が建つことが決まったからだ。
それまで一枚35円でE版を販売していたが、アザー系のスーパーが隣に建てば当然それより安い金額で、対抗してくる。そのまま手をこまねいていたら売上がダウンするのは必死。
そこで、導入したのが上記の会員制による景品配布と、更に思い切ったやり方をした。それは、値上げだ。
これまで35円だった写真に対して、高級プリントとしてキングサイズ(はがき相当)で絹目タイプ分厚いのプリントに入れ替えた。そして1枚あたりの金額は60円とした。
いわゆる差別化を行ったのだ。金額は上がったが、実質的な利益率も大幅に増えた。その分を景品として還元し、囲い込むというやり方をしたのだ。
取り組んだのは70年台半ばくらいからだと思うが、この方法は当たった。以前より売上は倍増し、数年すると日本中の写真業界のイベントに呼ばれ公演するほどに成った。まだまだ日本経済が上向きだった時代だ。
他地域でも、そういったスーパー系の格安プリントショップによって売上が減少する店が増えていた時期だ。それを逆手に取って売上を伸ばし、成功した店として紹介された。
これらの事実から私が学ぶべきは、やはり、価値観の転換だろう。時代に合わせた価値観を知り、先を見た戦略を立てる。我々のような商売は特に先読みが重要になってくる。それには危機感も重要だろう。
いつの状況でも、このままでいいのかどうか?考え、分析し、企画し実行する必要がある。実務と共に実験を重ねていく。失敗は恐れない。10個取り組んで一つ当たれば十分だ。
写真撮影:浅川正二 2010/10/17 @阿蘇