11月末というのに今日は天気がよく、気温もだいぶ上がってきた
。アボガドはあさちゃん先生のマンションの前で立ち止まり、向かい側にある小学校の入り口をみていた。明日からイルミネーションが点灯するのでその準備だろう。数人の大人たちと子どもたちが楽しそうに談笑しながら、LED照明の準備をしている。
アボガドはマンションに奥にあるエレベーターからあさちゃん先生のオフスに向かった。ドアをノックし、ガドガドを待った。
ガドガドはアボガドが何を言うのか恐れていた。IM JAPANから私をインドネシアに連れ帰る命令が出たのか?それとも組織の事に感づかれたのか?それでも今はとにかく話すしかない。アボガドを部屋に招き入れソファーに座った。
最初に口を開いたのはアボガドだった。
「ガドガドさんちょっと知って欲しいことがあるんですが、私がIM JAPANのエージェントだということはご存知ですよね。」
「知ってるわよ。私を騙していたんでしょ?」
「いえいえ、騙したりなんかしてませんよ。それよりあなたを守っていたんです。」
「守っていた?」
「あなたが大分に密航してきたときからすでにあなたが組織の一員であることも知っていました。いえ、本当の事を言うと、あなたを知ったのはここ熊本です。それ以前あなたは存在していませんでした。」
「えっ!何言ってるのよ。存在していない?!」
「そうです。存在していませんでした。」
「まって、また私を騙そうとしてるのね。」
「違います。冷静に聞いてください。あなたの記憶は捏造されています。」
「捏造?」
「あなたはインドネシア出身で、国に子どもたちを残してきたと思っていますよね。そしてあなたの体は組織の中に幽閉されている。意識体としてCOIを通じてユミツエワンの人格を操作している。そうですね?」
「なぜそれを・・?」
「私達の組織には最近現れた内通者がいます。私達はあなたの情報を集めあなたが記憶を操作されている事を突き止めました。そして、あなたを使ってあさちゃん先生を懐柔させ、それを足がかりに世界を変えようとしていることも分かりました。あなたに本当の体があるというのは嘘です。あなたはCOIが作りだしたバイオチップとユミツエワンの意識とが干渉して生み出された仮想人格です。」
「まって、まって、何言ってるの!私には子どももいるし母も居るのよ!」
「よく考えてください。あなたには子供の頃の記憶がありますか?本当にインドネシアで生まれたんですが?北朝鮮で喜び組に入っていた?おかしいですよね。喜び組には朝鮮労働党の組織指導部第5課が厳密な審査をして選ばれた者だけが入れます。そして重要な選考基準として、外国に親戚が居る人は除外されます。その選考に関わる記憶はありますか?それに子どもの顔思い出せますか?」